差し歯の治療を考える時、多くの人が直面するのが「保険診療」と「自費診療」の選択です。費用を抑えられる保険診療を選ぶか、高額でも質の高い自費診療を選ぶか。これは、単なる費用の問題だけでなく、差し歯の「寿命」や、長期的な「費用対効果」に大きく関わる、非常に重要な決断です。まず、「保険の差し歯」の最大のメリットは、その費用の安さです。国が定めたルールの中で、誰もが比較的安価に歯の機能を取り戻すことができます。しかし、その反面、使用できる素材や技術に制約があります。保険で使われる銀歯やプラスチックは、経年劣化しやすく、変色したり、すり減ったりします。また、土台や差し歯と歯との適合精度にも限界があり、数年経つと隙間から細菌が侵入し、二次的な虫歯になるリスクが高いと言われています。そのため、平均寿命は7年前後と比較的短く、数年ごとに再治療が必要になるケースも少なくありません。一方、「自費の差し歯」は、費用が高額になるというデメリットがありますが、それを上回る多くのメリットがあります。セラミックやジルコニアといった素材は、見た目が美しいだけでなく、汚れがつきにくく、劣化しにくいという特徴があります。これにより、二次的な虫歯や歯周病のリスクを低減できます。また、自費診療では、歯科医師が十分な時間をかけて、精密な型取りや噛み合わせの調整を行うことができます。歯にぴったりと適合した差し歯を、質の高い接着剤で装着するため、細菌の侵入経路を断ち切り、長期間にわたって安定した状態を保つことが可能です。結果として、その寿命は10年、15年以上と、保険の差し歯よりも大幅に長くなる傾向にあります。初期費用は高くても、再治療の回数が減ることで、時間的・身体的な負担、そして生涯にかかるトータルの医療費(生涯医療費)を抑えられる可能性もあるのです。どちらが良いと一概に言うことはできませんが、単に目先の費用だけでなく、長期的な視点で、自分の歯にどのような価値を見出すかを考えることが大切です。
保険と自費の差し歯の寿命と費用対効果を徹底比較