2025年9月
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風邪じゃないかも?扁桃炎が引き起こす片側の歯痛
喉の片側がひどく痛み、唾を飲むのも辛い。それに加えて、同じ側の歯や顎までズキズキと痛む。このような症状が出ると、「ひどい風邪をひいたかな」と考える人が多いかもしれません。しかし、それは「急性扁桃炎」が原因で引き起こされている可能性があります。扁桃腺は、喉の奥の両側にあるリンパ組織で、外部からの細菌やウイルスの侵入を防ぐ免疫の役割を担っています。この扁桃腺が、細菌やウイルスに感染して炎症を起こすのが扁桃炎です。疲れやストレスで免疫力が低下している時に発症しやすく、片側の扁桃腺だけが特に強く炎症を起こすことも珍しくありません。扁桃炎になると、喉の激しい痛みのほか、三百八度以上の高熱、全身の倦怠感、関節痛といった症状が現れます。そして、炎症が強くなると、その痛みが耳や首、さらには歯や顎にまで広がる「放散痛(ほうさんつう)」という現象が起こるのです。これは、喉の神経と歯や顎の神経が脳で近い場所を走っているために、脳が痛みの発生源を混同してしまうことで生じます。歯自体に問題はなくても、まるでひどい虫歯があるかのように感じられるのです。特に、飲み込む時の喉の痛みが非常に強く、鏡で喉の奥を見ると片側だけが赤く腫れていたり、白い膿が付着していたりする場合は、扁桃炎の可能性が高いでしょう。この場合、受診すべきは歯科ではなく「耳鼻咽喉科」です。適切な抗生物質などを処方してもらうことで、喉の炎症が治まり、それに伴って歯の痛みも自然と消えていきます。自己判断で風邪薬を飲み続けるのではなく、専門医の診察を受けることが重要です。