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その治療は終わりではなく始まりである
歯が欠けてから一週間、不安な日々を乗り越え、ようやく歯科医院での治療が終わった。詰め物や被せ物が入り、見た目も元通り、食事も不自由なくできるようになった。これで一件落着、と胸をなでおろしているかもしれません。しかし、その安堵感こそが、次なるトラブルへの入り口になる可能性があることを忘れてはなりません。今回の治療の完了は、決して終わりではなく、あなたの口腔ケアにおける新たな始まりと捉えるべきです。まず、なぜ今回、歯が欠けてしまったのか、その根本的な原因について考えてみましょう。単に硬いものを噛んだだけでしょうか。それとも、夜間の歯ぎしりや日中の食いしばりの癖が、歯に目に見えないダメージを蓄積させていたのかもしれません。あるいは、気づかないうちに進行していた初期の虫歯が、歯の強度を弱めていた可能性もあります。歯科医師と相談し、原因を突き止めることが、再発防止の第一歩です。もし歯ぎしりなどが原因であれば、就寝時に装着するマウスピース(ナイトガード)を作ることで、歯への負担を劇的に減らすことができます。そして、最も重要なのが、これからの定期検診です。今回のようなトラブルが起きるまで歯科医院に行かなかったという人は、これを機に、三か月から半年に一度のペースでプロのチェックを受ける習慣をつけましょう。定期検診では、自分では磨ききれない歯石の除去(クリーニング)はもちろん、虫歯や歯周病の兆候を早期に発見することができます。ごく初期の虫歯であれば、削らずに再石灰化を促すことで進行を止められる場合もあります。今回、歯が欠けてから一週間放置したことで、治療が複雑になったり、費用がかさんだりしたかもしれません。その経験を「高い授業料だった」で終わらせず、今後の予防への投資へと意識を切り替えることができれば、その経験は決して無駄にはなりません。治療した歯も、残っている健康な歯も、これからのあなたのケア次第です。生涯にわたって自分の歯で美味しく食事をし、心から笑うために、今日から新しいスタートを切りましょう。