「奥歯を治療したいけど、銀歯は絶対に嫌だ」。そう考える方にとって、近年、保険診療の選択肢が一つ増えました。それが「CAD/CAM冠(キャドキャムかん)」です。これは、これまで自費診療でしか実現できなかった「保険で奥歯を白くする」という希望を、一定の条件下で可能にした画期的な治療法です。CAD/CAM冠とは、セラミックの微粒子とプラスチックを混ぜ合わせた「ハイブリッドレジン」という素材のブロックを、コンピューター上で設計(CAD)し、そのデータに基づいて機械が自動で削り出して(CAM)作製する被せ物のことです。従来の、歯科技工士が手作業で作る方法とは異なり、デジタル技術を駆使して作られます。このCAD/CAM冠の最大のメリットは、何と言っても「保険適用で白い歯が手に入る」ことです。金属を一切使用しないため、銀歯のような見た目の問題や、金属アレルギーの心配もありません。適用される部位は、以前は小臼歯(前から4番目、5番目の歯)に限られていましたが、現在では、特定の条件(上下の歯が全て揃っているなど)を満たせば、第一大臼歯(6番目の歯)や、場合によっては第二大臼歯(7番目の歯)にも適用できるようになりました。しかし、良いことばかりではありません。CAD/CAM冠にはいくつかのデメリットも存在します。まず、「耐久性の問題」です。ハイブリッドレジンは、純粋なセラミックや金属に比べて強度が劣るため、強い力がかかると割れたり、欠けたりするリスクがあります。また、プラスチックが主成分であるため、長期間の使用で水分を吸収し、変色したり、表面がすり減ったりしやすいという弱点もあります。色調も、セラミックのように複雑な色合いを再現することは難しく、やや単調な白さになりがちです。全ての歯科医院がこの設備を導入しているわけではないため、治療を受けたい場合は、事前に医療機関に確認することも必要です。銀歯に代わる有力な選択肢ですが、その特性をよく理解した上で選ぶことが大切です。
保険でできる白い歯「CAD/CAM冠」とは?