歯磨きをしている時や、食事中に硬いものを噛んだ時、口の中から黒くて硬い石のような塊がポロっと取れた。そんな経験はありませんか。長年気になっていたものが取れて、「なんだかスッキリした」「ラッキー!」などと、喜んでしまってはいないでしょうか。しかし、それは全く喜ばしいことではありません。自然に取れた黒い歯石は、あなたの歯周病がかなり進行していることを示す、極めて危険なサインなのです。そもそも、セメントのように硬く、歯の根に強固にこびりついている黒い歯石が、なぜ自然に取れるのでしょうか。その理由は、歯周病が進行し、歯石の土台となっていた歯を支える骨(歯槽骨)が、歯周病菌によって溶かされてしまったからです。支えを失った歯がグラグラと揺れ始めたり、歯茎が大きく退縮して歯の根が露出したりした結果、隠れていた歯石が剥がれ落ちてきたのです。つまり、「取れた」のではなく、「取れるほどに歯の土台が破壊されてしまった」というのが正しい解釈です。取れた後の口の中は、決してきれいになったわけではありません。歯石が取れた跡の歯の根の表面は、ザラザラで細菌の温床となっており、露出した象牙質は、激しい知覚過敏や虫歯のリスクにさらされます。そして何より、ポロっと取れた歯石は、口の中に存在する無数の歯石のうちの、ほんの一つに過ぎません。その下には、まだまだ大量の黒い歯石が潜んでおり、あなたの気づかないところで、他の歯の土台も静かに破壊し続けているのです。この危険信号を無視して放置すれば、やがて他の歯も同じようにグラグラになり、最終的には一本、また一本と、大切な歯を失っていくという悲しい末路を辿ることになります。「歯石が取れた」は「治った」のサインではなく、「重症化のサイン」です。すぐに歯科医院を受診し、根本的な歯周病治療を開始する必要があります。