黒い歯石の正体は?歯茎からの危険信号
鏡を見て歯をチェックしている時、歯と歯茎の境目に黒い点や線を見つけて、ドキッとした経験はありませんか。「これは虫歯だろうか、それともただの汚れだろうか」と、爪でカリカリと引っ掻いてみても、びくともしない。その硬くて黒い塊の正体は、多くの場合「黒い歯石」です。そして、この黒い歯石の存在は、あなたの歯茎が発している非常に重要な危険信号なのです。黒い歯石は、専門的には「縁下歯石(えんかしせき)」と呼ばれます。その名の通り、歯茎の縁よりも下、つまり歯と歯茎の隙間である「歯周ポケット」の内部に形成される歯石です。では、なぜ歯石が黒くなるのでしょうか。その秘密は「血液」にあります。歯周ポケットの中では、歯周病菌によって歯茎が常に炎症を起こし、出血しやすい状態になっています。歯垢(プラーク)が、唾液の成分だけでなく、この歯周ポケット内から染み出した血液の成分と混ざり合って石灰化することで、黒っぽい色の硬い歯石が作られるのです。血液中のヘモグロビンという色素が、歯石を黒く染め上げている、とイメージすると分かりやすいでしょう。つまり、黒い歯石が存在するということは、歯周ポケット内で慢性的な出血、すなわち歯周病が進行しているという動かぬ証拠なのです。下の前歯の裏側などによく見られる白っぽい歯石(縁上歯石)とは、成り立ちも危険度も全く異なります。この黒い歯石を放置することは、歯周病菌の温床を自ら育てているのと同じことです。見えない場所で静かに歯を支える骨を溶かし、やがては大切な歯を失う原因となります。歯茎の境目に見える黒いものは、決して見過ごしてはならない、あなたの口腔健康からのSOSサインなのです。