白い歯石と黒い歯石は見た目以上に違う危険度
歯石と聞くと、多くの人が歯の裏側に付着した白っぽい、あるいは黄色っぽい塊を思い浮かべるでしょう。これらは「縁上歯石(えんじょうしせき)」と呼ばれ、唾液に含まれるカルシウムなどのミネラル成分が歯垢と結びついて石灰化したものです。しかし、歯石にはもう一つ、はるかに厄介で危険な存在があります。それが「黒い歯石」、すなわち「縁下歯石(えんかしせき)」です。この二つの歯石は、色やできる場所が違うだけでなく、その危険度において天と地ほどの差があるのです。まず、白い縁上歯石は、歯茎よりも上の見える位置にできます。比較的形成されるスピードが速く、歯垢が歯石になるまで数日から二週間程度です。硬さもそれほどではなく、歯科医院でのスケーリング(歯石除去)で比較的容易に取り除くことができます。もちろん、これも歯周病の原因となるため放置は禁物ですが、いわば「序の口」の敵と言えるでしょう。一方、黒い縁下歯石は、歯茎の下、つまり歯周ポケットという目に見えない深部に隠れるように形成されます。歯周ポケット内の血液成分を含んで固まるため、形成には数ヶ月から一年以上と長い時間がかかります。その結果、非常に硬く、まるでセメントのように歯の根に強固にこびりつきます。この黒い歯石こそが、歯周病を本格的に進行させる「ラスボス」のような存在です。その表面はザラザラで、歯周病菌が繁殖するための絶好の住処となります。そして、歯を支える顎の骨を溶かす毒素を放出し続け、静かに、しかし確実に歯の土台を破壊していくのです。黒い歯石は、白い歯石と比べて除去も困難で、専門的な技術と器具が必要となります。見た目の問題だけでなく、歯の寿命を左右する危険なサインとして、黒い歯石の存在を重く受け止める必要があります。