歯の根の先に溜まった膿が急激に増え、歯茎が風船のようにパンパンに腫れ上がってしまった。ズキンズキンと脈打つような激しい痛みに、顔まで熱を持っている。このような強い急性症状に見舞われた場合、歯科医院では、本格的な根管治療に先立って、「切開排膿(せっかいはいのう)」という緊急処置が行われることがあります。その名の通り、歯茎をメスで少しだけ切開し、溜まった膿を外に出してあげる処置です。これは、患者さんの辛い痛みを一刻も早く取り除くことを最優先とした、非常に効果的な治療法です。切開排膿は、どのような時に行われるのでしょうか。それは、膿が歯を支える骨の中から、歯茎の粘膜の下にまで達し、逃げ場を失ってパンパンに溜まってしまった状態の時です。この内圧の急上昇が、激しい痛みの主な原因となっています。この処置の流れは、まず、腫れている歯茎の表面に、塗るタイプの表面麻酔をします。そして、効いてきたところで、極細の針で注射の麻酔を追加します。麻酔が十分に効いていることを確認したら、メスを使って、膿が溜まっている部分の歯茎を数ミリだけ、ほんの少し切開します。すると、切開した部分から、溜まっていた膿と血液がドッと排出されます。器具で膿を優しく押し出し、生理食塩水などで内部をきれいに洗浄します。処置は通常、数分で終わります。膿を出すことで、パンパンだった内圧が一気に下がるため、あれほど辛かった痛みは劇的に楽になります。ただし、ここで重要なのは、切開排膿はあくまで「対症療法」であり、痛みを和らげるための応急処置に過ぎないということです。膿の発生源である根管内の感染を取り除かない限り、また同じように膿が溜まってしまいます。症状が落ち着いた後、根本的な原因を解決するための「根管治療」を、必ず最後まで受ける必要があります。
歯茎を切って膿を出す!緊急処置「切開排膿」とは?