顎関節症の治療でマウスピース(スプリント)を使用することになった場合、「このマウスピース、いつまで使い続ければいいのだろう?」と治療期間について疑問に思う方は多いでしょう。顎関節症のマウスピース治療の期間は、患者さんの症状の重症度や原因、マウスピースの種類、そして治療への反応などによって大きく異なり、一概に「これくらいの期間」と言うことは難しいのが現状です。一般的に、マウスピース治療の初期の目的は、顎関節や咀嚼筋への負担を軽減し、痛みや開口障害といった急性の症状を和らげることです。多くの場合、マウスピースを装着し始めてから数週間から数ヶ月程度で、症状の改善が見られることがあります。この急性期の症状が落ち着くまでの期間が、まず一つの目安となります。しかし、症状が改善したからといって、すぐにマウスピースの使用を中止して良いわけではありません。症状が再発するのを防いだり、より安定した状態を維持したりするために、歯科医師の指示に従って、さらに一定期間、マウスピースの使用を継続することが推奨される場合があります。特に、夜間の歯ぎしりや食いしばりが主な原因である場合、これらの癖が完全になくなるわけではないため、症状が落ち着いた後も、予防的に就寝時のマウスピース装着を続けるケースも少なくありません。中には、年単位で長期的に使用する方もいらっしゃいます。また、マウスピース治療は、顎関節症の治療計画全体の一部であることが多く、他の治療法(薬物療法、理学療法、生活習慣指導、噛み合わせの調整、矯正治療など)と並行して行われることもあります。これらの治療の進行状況によっても、マウスピースの使用期間は変動します。大切なのは、定期的に歯科医院を受診し、歯科医師による診察とマウスピースの調整を受けることです。歯科医師は、症状の変化やマウスピースの適合状態、噛み合わせなどをチェックし、今後の治療方針やマウスピースの使用期間について、その都度判断を下します。自己判断でマウスピースの使用を中止したり、通院をやめてしまったりすると、症状が再発したり、治療が振り出しに戻ってしまったりする可能性があります。疑問や不安な点があれば、遠慮なく歯科医師に相談し、納得のいく説明を受けるようにしましょう。そして、根気強く治療に取り組み、歯科医師と二人三脚でゴールを目指すことが重要です。