「最近ストレスが溜まっているせいか、また口内炎ができてしまった…」噛んだ覚えもないのに口内炎ができると、このようにストレスとの関連を疑う方は少なくないでしょう。実は、ストレスと口内炎、特に原因不明の口内炎には、非常に深い関係があると考えられています。では、なぜストレスが口内炎を引き起こすのでしょうか。そのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。まず、最も大きな影響として挙げられるのが「免疫力の低下」です。私たちの体は、精神的なストレスや肉体的な疲労にさらされると、免疫システム全体の機能が低下しやすくなります。免疫力が弱まると、口の中に普段から存在している細菌やウイルスの活動を抑えきれなくなり、粘膜に炎症が起こりやすくなります。これが、口内炎(特にアフタ性口内炎など)ができる直接的な原因の一つとなります。健康な状態であれば問題にならないようなわずかな刺激でも、免疫力が低下していると、粘膜が過敏に反応してしまうのです。次に、「自律神経の乱れ」も大きく関与しています。ストレスは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスを崩し、交感神経が優位な状態を引き起こします。交感神経が優位になると、血管が収縮し、末梢の血流が悪くなることがあります。これにより、口の中の粘膜への血流も低下し、粘膜組織に必要な酸素や栄養が十分に行き渡らなくなり、粘膜の抵抗力が弱まってしまうのです。また、交感神経の緊張は、唾液の分泌量を減少させることにも繋がります。唾液には、口の中を洗い流して清潔に保つ自浄作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、そして粘膜を保護する役割があります。唾液が減少し、口の中が乾燥すると(ドライマウス)、これらの機能が低下し、粘膜が傷つきやすくなるとともに、細菌も繁殖しやすくなって、口内炎ができやすい環境になってしまうのです。さらに、ストレスは「生活習慣の乱れ」も引き起こしやすいです。ストレスを感じると、食事が不規則になったり、栄養バランスが偏ったり(特にビタミンB群などが不足しがち)、睡眠時間が不足したり、喫煙や飲酒の量が増えたりすることがあります。これらの不健康な生活習慣は、体の抵抗力をさらに低下させ、口内炎のリスクを高めます。