差し歯の寿命を考える上で、その「素材」は最も重要な要素の一つです。素材によって、耐久性、美しさ、そして費用は大きく異なります。ここでは、代表的な差し歯の素材を、寿命が比較的短いとされるものから順に見ていきましょう。まず、保険適用で作られる「硬質レジン前装冠(こうしつれじんぜんそうかん)」です。これは主に前歯に使われ、金属のフレームの表面に、白いプラスチック(レジン)を貼り付けたものです。平均寿命は5年から7年程度とされています。安価に白い歯を入れられるメリットがありますが、レジン部分は時間と共に水分を吸収して変色しやすく、また、摩耗や衝撃で剥がれてしまうこともあります。同じく保険適用の「銀歯(金銀パラジウム合金)」は、主に奥歯に使われます。非常に硬く丈夫ですが、金属アレルギーのリスクや、口の中で目立ってしまう審美的な問題があります。また、金属は歯よりも硬すぎるため、噛み合う相手の歯をすり減らしてしまうことも。寿命は7年前後ですが、土台との間に隙間ができやすく、二次的な虫歯のリスクが高いと言われています。ここからは自費診療の素材です。「メタルボンド」は、金属のフレームにセラミックを焼き付けたもので、硬質レジン前装冠の上位互換と言えます。見た目も美しく、耐久性も高いですが、歯茎が下がると金属の黒いラインが見える(ブラックマージン)可能性があります。寿命は8年から10年程度です。「オールセラミック」は、金属を一切使わず、全てセラミックで作られた差し歯です。天然の歯に近い透明感と色調を再現でき、変色もありません。寿命は10年以上と長く、金属アレルギーの心配もありません。「ジルコニア」は、人工ダイヤモンドとも呼ばれる非常に硬いセラミックの一種です。特に奥歯など、強い力がかかる部位に適しており、耐久性は抜群です。寿命は10年以上の長期にわたって期待できます。自分のライフスタイルや価値観、そして予算に合わせて、歯科医師とよく相談し、最適な素材を選ぶことが、満足のいく治療と差し歯の長寿命化に繋がります。
素材でこんなに違う!差し歯の種類別寿命ランキング