大切に使ってきた差し歯も、いつかは寿命を迎えます。しかし、ある日突然壊れるというよりは、多くの場合、寿命が近づくと様々な「SOSサイン」を発し始めます。これらの小さな変化にいち早く気づき、対処することが、深刻なトラブルを防ぎ、自分の歯を守るために非常に重要です。最も分かりやすいサインが、「差し歯のぐらつきや脱離」です。差し歯を指で触ると少し動く、あるいは食事中にポロっと外れてしまった場合、それは差し歯を支えている土台(コア)や、歯の根そのものに問題が起きている可能性が高いです。内部で虫歯が進行していたり、歯の根が割れていたり(歯根破折)する危険なサインです。次に、「見た目の変化」も重要な指標です。保険適用の差し歯でよく見られるのが、「変色や黄ばみ」です。プラスチック製の部分は、経年劣化で水分を吸収し、色がくすんできます。また、差し歯と歯茎の境目に「黒い線が見える(ブラックマージン)」のも寿命のサインです。これは、内部の金属が溶け出して歯茎を黒く染めてしまったり、歯茎が下がって差し歯の金属部分が露出したりすることで起こります。さらに、「口臭や不快な味」がするようになった場合も要注意です。差し歯と歯の間に隙間ができ、そこに食べカスや歯垢が溜まって腐敗している可能性があります。これは二次的な虫歯や歯周病の温床となります。「痛みや違和感」も無視できません。噛んだ時に痛みを感じる、歯茎が腫れている、うずくような鈍い痛みがある、といった症状は、歯の根の先で膿が溜まっていたり、歯周病が進行していたりするサインです。これらのSOSサインは、差し歯そのものだけでなく、その土台となっているあなた自身の歯が危険にさらされていることを示しています。「まだ使えるから」と放置せず、どんな些細な変化でも、気づいた時点ですぐに歯科医院を受診し、専門家の診断を仰ぐことが、手遅れになるのを防ぐための最善策なのです。
寿命のサインかも?差し歯からのSOSを見逃さない